第23章

小说:窗边的小豆豆(中文版+日文版)作者:[日]黑柳彻子字数:3510更新时间 : 2017-07-30 10:15:55

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トットちゃんの耳のそばで、空気が、ビューンビューンと音を立てた。トットちゃんは、両手でひざを抱えて、前につんのめらないように、注意した。少し怖かったけど、とてもとても楽しいことだった。滑り終わると、見てた人が、拍手をした。トットちゃんは、スキーの先っちょから上がると、皆さんに、頭を少し下げて、「サンキュー」といった。みんなは、ますます拍手をした。この人が、シュナイダーという、世界でも有名なスキーの名人で、珍しい、銀のシュトックを、いつも持っている、なんてことがわかったのは、あとになってからのことだった。トットちゃんがこの人を好きだ、と思ったのは、滑り終わって、トットちゃんが、みんなから拍手された後、この人が、腰をかがめ、トットちゃんの手をとって、とても、トットちゃんを大切な人のように見てから、「サンキュー」といったときだった。その人は、トットちゃんを、「子供」という風じゃなく、ちゃんとした大人の女の人のように、扱ってくれた。そして、その男の人が、腰をかがめたとき、それは、トットちゃんが、心の底から、その人の優しさを感じるような、そんな姿だった。そして、その人の後ろには、真っ白な世界が、どこまでも、どこまでも、続いていた。

    冬休みが終わって、学校に集まった生徒たちは、休みの間に、素晴らしいことが起こっていたのを発見して叫び声を上げた。それは、みんなの教室用の電車が並んでいるのと反対側に……つまり弘道をはさんだ向こうの花壇のわきに、もう一台、電車が来ていたんだけど、それが、冬休みの間に、図書室になっていたからだった。そして、何でもできちゃって、みんなが尊敬している小使いのおじさんの良ちゃんが、よほどがんばってくれたとみえて、電車の中には、たくさんの棚が出来ていて、いろんな字や色の本が、ズラリと並んでいた。そして、そこで本が読めるように、机や椅子も並んでいた。校長先生は、いった。「これは、君たちの図書室だよ、ここにある本は、誰でも、どれでも読んでいい。「何年生だから、どの本」とか、そういう事は考えることはないし、いつでも、好きなときに、図書室に入ってかまわない。借りたい本があったら、家に持って帰って読んでいい。その代わり、読んだら、返しとけよ。家にあるので、みんなに読ませたい本があったら持ってきてくれるのも、先生は、うれしいよ。とにかく、本をたくさん、読んでください」みんなは、口々に先生に言った。「ねえ、今日の一時間目は、図書室にしよう!!」「そうかい」と、校長先生は、みんなが興奮しているのを見て、ちょっと、うれしそうに笑ってから、いった。「じゃ、そうしようじゃないか」そこで、トモエの生徒、全員、五十人が一台の電車に乗り込んだ。みんなが大騒ぎで、それぞれ本を選んだあと、椅子に座ろうとしたけど、すわれたのは半分くらいで、あとは立ったままだった。だから、本当に、それは、満員電車の中で、立ったまま本を読んでるような光景で、見てるだけでも、おかしかった。でも、みんな、もう、うれしくて、たまらなかった。トットちゃんは、まだ、字は、そんなにたくさん読めなかったkら、「面白そうな絵」の入ってる本を読むことにした。みんなが本を手にして、ページをめくり始めると、ちょっと静かになった。でも、それは、ほんのちょっとの間で、そのうち、あっちでも、こっちでも、読みあがる声だの、わからない字を誰かに聞く声だの、本をとりかえっこしようとしてる声だの、笑い声で、いっぱいになった。中には、“歌いながら絵を描く本”というのを読み始めたために、大きい声で、マールコテン マールコテンタテタテ ヨコヨコ丸かいて チョンマール子さん毛が三本 毛が三本 毛が三本あっという間に おかみさん なんて、大きい声で歌いながら、まるまげを結った、お上さんの絵を描いてる子もいた。毎日、自分の好きな科目から勉強してよくて、「“人の声がうるさいと、自分の勉強が出来ない”というようじゃ困る。どんなに、周りが、うるさくても、すぐ集中できるように!」という風に教育されるトモエの子にとっては、このマールコテンも別に気にならず、一緒に同調して歌ってる子もいたけれど、みんな自分の本に、熱中していた。トットちゃんのは、民話の本みたいのだったけど、「おなら」をするので、お嫁にいけないお金持ちの娘が、やっと、お嫁にいけたので、うれしくなって、結婚式の晩、いつもより、もっと大きい、おならをしたので、寝ていたお婿さんが、その風で、部屋を七まわり半して、気絶する、というような話だった。「面白そうな絵」というのは、男の人が、部屋の中を飛んでいるところだった。(この本は、後で、みんなの引っ張りダコになった)とにかく、全校生徒が、ギュウヅメでも、電車の窓から差し込む朝の光の中で、一生懸命、本を読んでる姿は、校長先生にとって、うれしいことに違いなかった。結局、その日は、一日中、みんな図書室で過ごすことになった。そして、それからは、雨で外に出られないときとか、いろんなとき、この図書室は、みんなの集会所にもなった。そして、ある日、校長先生は、いった。「そのうち、図書室の近くに便所を作ろうな」なぜなら、みんな、ギリギリまで我慢して本を読むので、誰もが、すごい恰好で、講堂の向こうのトイレまで、走って行くからだった。

    今日の午後のことだった。放課後、家に帰ろうと支度をしてるトットちゃんのところに、大栄君が、走って来て、声をひそめて、いった。「校長先生が、怒ってる」「どこで?」と、トットちゃんは聞いた。だって、校長先生が怒るなんて、それまで知らなかったから、とっても、びっくりしたからだった。大栄君は、大急ぎで走って来たのと、おどろいたらしいので、人の良さそうな目を、まん丸にして、それから、少し鼻をふくらませて、いった。「校長先生の家の台所のところ」「行こう!」トットちゃんは、大栄君の手をつかむと、先生の家の台所のほうに向かって走り出した。校長先生の家は、講堂の横から続いていて、お台所は、校庭の裏口に近いところにあった。いつかトットちゃんが、トイレの汲み取り口に飛び込んだとき、すっかり、きれいに洗っていただいたのも、この、お台所からはいった、お風呂場のところだったし、お弁当のときの「海のもの」と「山のもの」の、おかずが出来るのも、この、お台所だった。そーっと、二人が足をしのばせて、近づくと、閉まってる戸の中から、本当に、校長先生の怒ってるらしい声がした。その声は、いった。「どうして、あなたは、そんなに、気軽に、高橋君に、「しっぽがある」なんて、いったんですか?」その怒ってる声に、トットちゃん達の受け持ちの女の先生の、答えるのが聞こえた。「そんな深い意味じゃなく、私は、高橋君が目に入って、可愛いと思ったので、いっただけなんです。」「それが、どんなに深い意味があるか、あなたには、わかってもらえないんですか。僕が、どんなに、高橋君に対しても、気を配っているか、あなたに、どうしたら、わかってもらえるんだろうか!」トットちゃんは、今日の朝の授業のときのことを思い出した。今朝、この受け持ちの先生は、「昔、人間には、しっぽが、あった」という話をしてくれたのだった。これは、とても、楽しい話で、みんな、気に入った。大人の言葉で言えば、進化論の初歩の話、ということになるのだろうけど、とにかく、とても珍しい事で、特に、先生が、「だから、今でも、みんなに、ビテイコツ、というのが、残っているんです」といったときは、トットちゃんをはじめとしてみんな、お互いに、どれが、ビテイコツか、で、教室は、大騒ぎになった。そして、その話の最後のとき、その先生が、冗談に、「まだ、しっぽの残ってる人も、いるかな?高橋君は、あるんじゃないの?」といったのだった。高橋君は、急いで立ち上がると、小さい手を振って、真剣に、「ありません」といった。そのときのことを、校長先生が怒っているのだ、と、トットちゃんには、わかった。校長先生の声は、怒ってる、というより、悲しそうな声に変わっていた。「あなたには、高橋君が、あなたに、尻尾がある、といわれて、どんなに気がするだろうか、と考えてみたんですか?」女の先生の、返事は聞こえなかった。トットちゃんには、どうして、校長先生が、こんなに、この、しっぽのことで、怒るのか、わからない、と思った。(もし、私が、先生から、しっぽがあるの?と聞かれたら、うれしくなっちゃうのにな)確かに、そうだった。

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