第34章

小说:窗边的小豆豆(中文版+日文版)作者:[日]黑柳彻子字数:3503更新时间 : 2017-07-30 10:15:56

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家に帰ったトットちゃんは、まず、いつものように、犬のロッキーを探した。でも、ロッキーは、どこにも見えなかった。家の中にはもちろん、庭にも、パパの趣味の蘭なんかがあった温室にも。トットちゃんは心配になった。いつもなら、トットちゃんが、家の近くまで帰ってきただけで、どっかから、飛び出してくるロッキーなんだから……。トットちゃんは、家を出て、ずーっと、外の通りのほうまで行って、名前を呼んだけど、どこからも、あの、懐かしい目や耳や、しっぽは見えなかった。トットちゃんは、自分が外に出ているうちに、家に帰ってるかも知れないと思って、走って帰ってみた。でも、まだ帰って来ていなかった。トットちゃんは、ママに聞いた。「ロッキーは?」さっきから、トットちゃんが走りまわっているのを、知っているはずのママは、だまっていた。トットちゃんは、ママのスカートを引っ張って聞いた。「ねえ、ロッキーは?」ママは、とても答えにくそうに、いった。「いなくなったの」トットちゃんは、信じられなかった。(いなくなった?)「いつ?」トットちゃんは、ママの顔を見て聞いた。ママは、どうしたらいいか……という風な悲しい感じで、いった。「あなたが、鎌倉に出かけて、すぐ」それから、ママは、急いで、つけ足した。「随分探したのよ。遠くまで行ってみたし、みんなにも聞いてみたけど、どこにも、いないのよ。あなたに、なんていったら、いいか、ママは考えていたんだけど……。ごめんなさいね……」そのとき、トットちゃんは、はっきりと、わかった。ロッキーは、死んだんだ。(ママは、私を悲しませないように、いってるけど、ロッキーは死んだんだ)トットちゃんには、はっきりしていた。今まで、トットちゃんが、どんなに遠くに出かけても、ロッキーは、絶対に、遠出をすることは、なかった。なぜなら、トットちゃんが、必ず帰ってくることを知っていたからだった。(私に、なにもいわずに、ロッキーが出かけていくなんて、絶対に、ない)それは、確信に近かった。トットちゃんは、それ以上、ママに何も言わなかった。ママの気持ちは、充分に、わかったからだった。トットちゃんは、下を向いたまま、いった。「どこに行ったのかなあ!」そういうのが、精一杯で、トットちゃんは、二階の自分の部屋に、かけこんだ。ロッキーのいない家の中は、よその家のようにさえ、思えた。トットちゃんは、部屋に入ると、泣きそうになるのを我慢して、もう一度、考えてみた。それは、ロッキーに対して、なにか、“意地悪なことか、家を出て行くようなことをしなかったか、どうか?”ということだった。小林先生は、いつも、トモエの生徒に、いっていた。「動物を、だましちゃ、いけないよ。君達を信じてる動物を、裏切るようなことを、しちゃ、可哀そうだからね。犬なんかに、“お手をしたら、お菓子をやるよ”なんて、いって、お手をさせて、何もやらなかったりするなよ。犬は、君達を信じなくなるし、性格が悪くなるからね」このことを守っているトットちゃんは、ロッキーを、だますようなことは、していなかったし、思い当たることは、まったく、なかった。そのとき、トットちゃんは、床においてある、熊のぬいぐるみの足に、くっついているものを見た。いままで、我慢していたトットちゃんは、それを見ると、声を上げて、泣いた。それは、ロッキーの、薄茶色の毛だった。トットちゃんが、鎌倉に出発する朝、ロッキーと、ここで、ふざけて、転がったりしたとき、ロッキーから、抜け落ちた毛だった。その、ほんの数本の、シェパードの毛を、手に握りしめたまま、トットちゃんは、いつまでも、いつまでも、泣いた。涙も、泣く声も、どうしても、止まらなかった。泰明ちゃんに続いて、トットちゃんは、また、親友を、なくしてしまった。

    トモエで、みんなから人気のある、小使いさんの良ちゃんが、とうとう出征することになった。生徒より、ずーっと、大人で、おじさんだったけど、みんなは、親しみを込めて、「良ちゃん!!」と呼んだ。そして、良ちゃんは、みんなが困ったときの、助けの神様だった。良ちゃんは、何でも出来た。いつも、黙って笑っているけど、困って助けのいる子の必要とするものを、すぐ、わかってくれた。トットちゃんが、トイレの汲み取り口の、地面にあるコンクリートの蓋も、すぐ助けてくれて、嫌がりもしないで洗ってくれたのも、良ちゃんだった。小林先生は、出征して行く良ちゃんのために、「茶話会をしよう」といった。「サワカイ?」なんだろう?みんなは、すっかり、うれしくなった。何にも知らないことを知るのは、うれしいことだから。勿論、子供たちには、「送別会」とせずに、「茶話会」とした、小林先生の配慮までは、かわっていなかった。送別会といったら、(それは、悲しい)と、始めから、大きい子には、わかってしまうに違いなかった。でも、「茶話会」は、誰も知らなかったから、みんな興奮した。放課後、小林先生は、みんなに講堂に、お弁当のときのように、机を、丸く並べるように、といった。みんなが、丸くなって、座ると、小林先生は、みんなに、スルメの焼いた細いのを、一本ずつ、配った。これでも当時としては、大ご馳走だった。それから、先生は、良ちゃんと並んで座ると、コップに入った、少しのお酒を、良ちゃんの前においた。出征して行く人だけに、配給になる、お酒だった。校長先生は、いった。「トモエで初めての、茶話会だ。楽しい会にしようね。みんなは、良ちゃんに、いいたいことがあったら、いってください。良ちゃんだけじゃなく、生徒に、いってもいいよ。一人ずつ、真ん中に立って、さあ、始めよう」スルメを、学校で食べるのも初めてなら、良ちゃんが、みんなと一緒にすわるのも、それから、お酒をチビチビやる、良ちゃんを見るのも初めてだった。次々に、みんなは、良ちゃんのほうをむいて立つと、考えを言った。始めのうちの、誰かは、「いってらっしゃい」とか、「病気しないでね」とか、いう風だったけど、トットちゃんのクラスの右田君が、「今度、田舎から、葬式まんじゅう、持ってきて、みんなにあげます!!」なんて、言った頃から、もう、大笑いになった。(だって、右田君は、もう一年も前から、その前に田舎で食べた、この葬式まんじゅうの味が忘れられなくて、ここあるごとに、みんなに、「くれる」、と約束してたんだけど、一度も、持ってきてくれたことがないからだった)校長先生は、始め、この右田君の「葬式まんじゅう」という言葉をきいたときは、(どきっ!!)といた。ふつうなら、縁起が、悪い言葉だかrあ。でも、右田君が、実に無邪気に、「みんなに、おいしいものを食べさせたい」という気持ちを現しているのだから、と、一緒に笑った。良ちゃんも、大笑いした。良ちゃんも、ずーっと、「持って来てやる」、と、右田君から、いわれていたからだった。「僕は、日本一の園芸家になります」と、約束した。大栄君は、等々力にある、物凄く、大きい園芸家の子供だった。青木恵子ちゃんは、黙って立つと、いつものように、恥ずかしそうに笑って、だまって、おじぎをして、席に戻った。トットちゃんは、出しゃばって、真ん中にいくと、恵子ちゃんの、お辞儀に、つけ足した。「恵子ちゃん家の、ニワトリ、空を、とぶんでーす。私は、この間、見ましたよ!」天寺君がいった。「ケガした猫や、犬がいたら、僕のところへ持ってきてね。なおして、あげるから」高橋君は、机の下を、あっ!という間に、くぐって、真ん中に立つと、元気に言った。「良ちゃん、ありがとう。いろんなこと、全部、ありがとう」税所愛子さんは、「良ちゃん、いつか、ころんだとき、包帯してくださって、ありがとう。忘れません」といった。税所さんは、日露戦争で有名な、東郷元帥が大叔父さまにあたり、また、明治時代の、おうたどころの歌人として知られた税所敦子の親戚でも会った。(でも、税所さんは、自分で、そういうことを口に出すことは、一度もなかった)ミヨちゃんは、校長先生の娘だから、一番、良ちゃんと、親しい間柄だった。そのせいか、涙が、目に、いっぱいになった。「気をつけて行ってね、良ちゃん。手紙、書くわね」トットちゃんは、あんまりたくさん、言いたいことがあって、困った。でも、これに決めた。「良ちゃんが行っちゃっても、私たちは、毎日、サワカイ、やりまーす!!」校長先生も良ちゃんも笑った。みんなも、トットちゃんまで笑った。でも、このトットちゃんの言った事は、次の日から、本当になった。

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