第52章

小说:挪威的森林(中日双语版)作者:村上春树字数:3512更新时间 : 2017-07-31 14:04:05

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まあ仕方ないから外してあげたわよ、私。ぴったりしたシャツ着てたもんだから、そのボタン外してね、そして背中のホックを外したの。十三にしちゃおっぱいの大きな子でね、私の二倍はあったわね。ブラジャーもね、ジュニア用のじゃなくてちゃんとした大人用の、それもかなり上等なやつよ。でもまあそういうのもどうでもいいことじゃない?私ずっと背中さすってたわよ、馬鹿みたいに。ごめんなさいねってその子本当に申しわけないって声で言った、そのたびに私、気にしない気にしないって言ってたわねえ」



    レイコさんは足もとにとんとんと煙草の灰を落とした。僕もその頃には葡萄を食べるのをやめて、じっと彼女の話に聞き入っていた。



    「そのうちにその子しくしくと泣きはじめたの。



    『ねえ、どうしたの?』って私言ったわ。



    『なんでもないんです』



    『なんでもなくないでしょ。正直に言ってごらんなさいよ』



    『時々こんな風になっちゃうんです。自分でもどうしようもないんです。淋しくって、哀しくて、誰も頼る人がいなくて、誰も私のことをかまってくれなくて。それで辛くて、こうなっちゃうんです。夜もうまく眠れなくて、食欲も殆んどなくて。先生のところにくるのだけが楽しみなんです、私』



    『ねえ、どうしてそうなるのか言ってごらんなさい。聞いてあげるから』



    家庭がうまくいってないんです、ってその子は言ったわ。両親を愛することができないし両親の方も自分を愛してはくれないんだって。父親は他に女がいてろくに家に戻ってこないし、母親はそのことで半狂乱になって彼女にあたるし、毎日のように打たれるんだって彼女は言ったの。家に帰るのが辛いんだって。そういっておいおい泣くのよ。かわいい目に涙をためて。あれ見たら神様だってほろりとしちゃうわよね。それで私こう言ったの。そんなにお家に帰るのが辛いんだったらレッスンの時以外にもうちに遊びに来てもいいわよって。すると彼女は私にしがみつくようにして『本当にごめんなさい。先生がいなかったら、私どうしていいかわかんないの。私のこと見捨てないで。先生に見捨てられたら、私行き場がないんだもの』って言うのよ。



    仕方がないから私、その子の頭を抱いて撫でてあげたわよ、よしよしってね。その頃にはその子は私の背中にこう手をまわしてね、撫でてたの。そうするとそのうちにね、私だんだん変な気になってきたの。体がなんだかこう火照ってるみたいでね。だってさ、絵から切り抜いたみたいなきれいな女の子と二人でベッドで抱きあっていて、その子が私の背中を撫でまわしていて、その撫で方たるやものすごく官能的なんだもの。亭主なんてもう足もとにも及ばないくらいなの。ひと撫でされるごとに体のたがが少しずつ外れていくのがわかるのよ。それくらいすごいの。気がついたら彼女私のブラウス脱がせて、私のブラ取って、私のおっぱいを撫でてるのよ。それで私やっとわかったのよ、この子筋金入りのレズビアンなんだって。私前にも一度やられたことあるの、高校のとき、上級の女の子に。それで私、駄目、よしなさいって言ったの。



    『お願い、少しでいいの、私、本当に淋しいの。嘘じゃないんです。本当に淋しいの。先生しかいないんです。見捨てないで』そしてその子、私の手をとって自分の胸にあてたの。すごく形の良いおっぱいでね、それにさわるとね、なんかこう胸がきゅんとしちゃうみたいなの。女の私ですらよ。私、どうしていいかわかんなくてね、駄目よ、そんなの駄目だったらって馬鹿みたいに言いつづけるだけなの。どういうわけか体が全然動かないのよ。高校のときはうまくはねのけることができたのに、そのときは全然駄目だったわ。体がいうこときかなくて。その子は左手で私の手を握って自分の胸に押し付けて、唇で私の乳首をやさしく噛んだり舐めたりして、右手で私の背中やらわき腹やらお尻やらを愛撫してたの。カーテンを閉めた寝室で十三歳の女の子に裸同然にされて――その頃はもうんなんだかわからないうちに一枚一枚服を脱がされてたの――愛撫されて悶えてるんなんて今思うと信じられないわよ。馬鹿みたいじゃない。でもそのときはね、なんだかもう魔法にかかったみたいだったの。その子は私の乳首を吸いながら『淋しいの。先生しかしないの。捨てないで。本当に淋しいの』って言いつづけて、私の方は駄目よ駄目よって言いつづけてね」



    レイコさんは話をやめて煙草をふかした。



    「ねえ、私、男の人にこの話するのはじめてなのよ」とレイコさんは僕の顔を見て言った。「あなたには話した方がいいと思うから話してるけれど、私だってすごく恥かしいのよ、これ」



    「すみません」と僕は言った。それ以外にどう言えばいいのかよくわからなかった。



    「そういうのがしばらくつづいて、それからだんだん右手が下に降りてきたのよ。そして下着の上からあそこ触ったの。その頃は私はもうたまんないくらいにぐじゅぐじゅよ、あそこ。お恥かしい話だけれど。あんなに濡れたのはあとにも先にもはじめてだったわね。どちらかいうと、私は自分がそれまで性的に淡白な方だと思ってたの。だからそんな風になって、自分でもいささか茫然としちゃったのよ。それから下着の中に彼女の細くてやわらかな指が入ってきて、それで……ねえ、わかるでしょ、だいたい?そんなこと私の口から言えないわよ、とても。そういうのってね、男の人のごつごつした指でやられるのと全然違うのよ。凄いわよ、本当。まるで羽毛でくすぐられてるみたいで。私もう頭のヒューズがとんじゃいそうだったわ。でもね、私、ボォッとした頭の中でこんなことしてちゃ駄目だと思ったの。一度こんなことやったら延々とこれをやりつづけることになるし、そんな秘密も抱えこんだら私の頭はまだこんがらがるに決まっているんだもの。そして子供のことを考えたの。子供にこんなところ見られたらどうしようってね。子供は土曜日は三時くらいまで私の実家に遊びに行くことになっていたんだけれど、もし何かがあって急にうちに帰ってきたりしたらどうしようってね。そう思ったの。それで私、全身の力をふりしぼって起きあがって『止めて、お願い!』って叫んだの。



    でも彼女止めなかったわ。その子、そのとき私の下着脱がせてクンニリングスしてたの。私、恥かしいから主人さえ殆んどそういうのさせなかったのに、十三歳の女の子が私のあそこぺろぺろ舐めてるのよ。参っちゃうわよ。私、泣けちゃうわよ。それがまた天国にのぼったみたいにすごいんだもの。



    『止めなさい』ってもう一度どなって、その子の頬を打ったの。思いきり。それで彼女やっとやめたわ。そして体起こしてじっと私を見た。私たちそのとき二人ともまるっきりの裸でね、ベッドの上に身を起こしてお互いじっと見つめあったわけ。その子は十三で、私は三十一で……でもその子の体を見てると、私なんだか圧倒されちゃったわね。今でもありありと覚えているわよ。あれが十三の女の子の肉体だなんて私にはとても信じられなかったし、今でも信じられないわよ。あの子の前に立つと私の体なんて、おいおい泣き出したいくらいみっともない代物だったわ。本当よ」



    なんとも言いようがないので僕は黙っていた。



    「ねえどうしてよってその子は言ったわ。『先生もこれ好きでしょ?私最初から知ってたのよ。好きでしょ?わかるのよ、そういうの。男の人とやるよりずっといいでしょ?だってこんな濡れてるじゃない。私、もっともっと良くしてあげられるわよ。本当よ。体が溶けちゃうくらい良くしてあげられるのよ。いいでしょ、ね?』でもね、本当にその子の言うとおりなのよ。本当に。主人とやるよりその子とやってる方がずっと良かったし、もっとしてほしかったのよ。でもそうするわけにはいかないのよ。『私たち週一回これやりましょうよ。一回でいいのよ。誰にもわからないもの。先生と私だけの秘密にしましょうね?』って彼女は言ったわ。



    でも私、立ち上がってバスローブ羽織って、もう帰ってくれ、もう二度とうちに来ないでくれって言ったの。その子、私のことじっと見てたわ。

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