第2章

小说:窗边的小豆豆(中文版+日文版)作者:[日]黑柳彻子字数:3518更新时间 : 2017-07-30 10:15:55

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そして、こう叫んだ。「私、切符屋さんになろうと思うんだ!」ママは、驚きもしないで、いった。「でも、スパイになるって言ってたのは、どうするの?」トットちゃんは、ママに手を取られて歩き出しながら、考えた。(そうだわ。昨日までは、絶対にスパイになろう、って決めてたのに。でも、いまの切符をいっぱい箱にしまっておく人になるのも、とても、いいと思うわ)「そうだ!」トットちゃんは、いいことを思いついて、ママの顔をのぞきながら、大声をはりあげていった。「ねえ、本当はスパイなんだけど、切符屋さんなのは、どう?」ママは答えなかった。本当のことを言うと、ママはとても不安だったのだ。もし、これから行く小学校で、トットちゃんのことを、あずかってくれなかったら……。小さい花のついた、フェルトの帽子をかぶっている、ママの、きれいな顔が、少しまじめになった。そして、道を飛び跳ねながら、何かを早口でしゃべってるとっとちゃんを見た。トットちゃんは、ママの心配を知らなかったから、顔があうと、うれしそうに笑っていった。「ねえ、私、やっぱり、どっちもやめて、チンドン屋さんになる!!」ママは、多少、絶望的な気分で言った。「さあ、遅れるわ。校長先生が待ってらしゃるんだから。もう、おしゃべりしないで、前を向いて、歩いてちょうだい」二人の目の前に、小さい学校の門が見えてきた。

    窓際のトットちゃん 新しい学校の門をくぐる前に、トットちゃんのママが、なぜ不安なのかを説明すると、それはトットちゃんが、小学校一年なのにかかわらず、すでに学校を退学になったからだった。一年生で!!  つい先週のことだった。ママはトットちゃんの担任の先生に呼ばれて、はっきり、こういわれた。 「お宅のお嬢さんがいると、クラス中の迷惑になります。よその学校にお連れください!」 若くて美しい女の先生は、ため息をつきながら、繰り返した。 「本当に困ってるんです!」 ママはびっくりした。(一体、どんなことを……。クラス中の迷惑になる、どんなことを、あの子がするんだろうか……) 先生は、カールしたまつ毛をパチパチさせ、パーマのかかった短い内巻の毛を手でなでながら説明に取り掛かった。 「まず、授業中に、机のフタを、百ぺんくらい、あけたり閉めたりするんです。そこで私が、用事がないのに、開けたり閉めたりしてはいけませんと申しますと、お宅のお嬢さんは、ノートから、筆箱、教科書、全部を机の中にしまってしまって、一つ一つ取り出すんです。たとえば、書き取りをするとしますね。するとお嬢さんは、まずフタを開けて、ノートを取り出した、と思うが早いか、パタン!とフタを閉めてしまいます。そして、すぐにまた開けて頭を中につっこんで筆箱から“ア”を書くための鉛筆を出すと、急いで閉めて、“ア”を書きます。ところが、うまく書けなかったり間違えたりしますね。そうすると、フタを開けて、また頭を突っ込んで、消しゴムをだし、閉めると、急いで消しゴムを使い、次に、すごい早さで開けて、消しゴムをしまって、フタを閉めてしまいます。で、すぐ、また開けるので見てますと、“ア”ひとつだけ書いて、道具をひとつひとつ、全部しまうんです。鉛筆をしまい、閉めて、また開けてノートをしまい……というふうに。そして、次の“イ”のときに、また、ノートから始まって、鉛筆、消しゴム……その度に,私の目の前で、目まぐるしく、机のフタが開いたり閉まったり。私、目が回るんです。でも、一応、用事があるんですから、いけないとは申せませんけど……」 先生のまつ毛が、その時を思い出したように、パチパチと早くなった。 そこで聞いて、ママには、トットちゃんが、なんで、学校の机を、そんなに開けたり閉めたりするのか、ちょっとわかった。というのは、初めて学校に行って帰ってきた日に、トットちゃんが、ひどく興奮して、こうママに報告したことを思い出したからだった。「ねえ、学校って、すごいの。家の机の引き出しは、こんな風に、引っ張るのだけど、学校のはフタが上にあがるの。ゴミ箱のフタと同じなんだけど、もっとツルツルで、いろんなものが、しまえて、とってもいいんだ!」ママには、今まで見たことのない机の前で、トットちゃんが面白がって、開けたり閉めたりしてる様子が目に見えるようだった。そして、それは、(そんなに悪いことではないし、第一、だんだん馴れてくれば、そんなに開けたり閉めたりしなくなるだろう)と考えたけど、先生には、「よく注意しますから」といった。ところが、先生には、それまでの調子より声をもうすこし高くして、こういった。「それだけなら、よろしいんですけど!」ママは、すこし身がちぢむような気がした。先生は、体を少し前にのり出すといった。「机で音を立ててないな、と思うと、今度は、授業中、立ってるんです。ずーっと!」ママは、またびっくりしたので聞いた。「立ってるって、どこにでございましょうか?」先生はすこし怒った風にいった。「教室の窓のところです!」ママは、わけが分からないので、続けて質問した。「窓のところで、何をしてるんでしょうか?」先生は、半分、叫ぶような声で言った。「チンドン屋を呼び込むためです。」 先生の話を、まとめて見ると、こういうことになるらしかった。一時間目に、机をパタパタを、かなりやると、それ以後は、机を離れて、窓のところに立って外を見ている。そこで、静かにしていてくれるのなら、立っててもいい、と先生が思った矢先に、突然、トットちゃんは、大きい声で「チンドン屋さーん!」と外に向かって叫んだ。だいたい、この教室の窓というのが、トットちゃんにっとては幸福なことに、先生にとっては不幸なことに、1階にあり、しかも通りは目の前だった。そして境といえば、低い、生垣があるだけだったから、トットちゃんは、簡単に、通りを歩いてる人と、話ができるわけだったのだ。さて、通りかかったチンドン屋さんは、呼ばれたから教室の下まで来る。するとトットちゃんは、うれしそうに、クラス中の皆に呼びかけた。「来たわよー」。勉強してたクラス中の子供は、全員、その声で窓のところに、詰め掛けて、口々に叫ぶ。「チンドン屋さーん」。すると、トットちゃんは、チンドン屋さんに頼む。「ねえ、ちょっとだけで、やってみて?」学校のそばを通る時は、音をおさえめにしているチンドン屋さんも、せっかくの頼みだからというので盛大に始める。クラスネットや鉦や太鼓や、三味線で。その間、先生がどうしてるか、といえば、一段落つくまで、ひとり教壇で、ジーっと待ってるしかない。(この一曲が終わるまでの辛抱なんだから)と自分に言い聞かせながら。 さて、一曲終わると、チンドン屋さんは去って行き、生徒たちは、それぞれの席に戻る。ところが、驚いたことに、トットちゃんは、窓のところから動かない。「どうして、まだ、そこにいるのですか?」という先生の問いに、トットちゃんは、大真面目に答えた。「だって、また違うチンドン屋さんが来たら、お話しなきゃならないし。それから、さっきのチンドン屋さんが、また、戻ってきたら、大変だからです。」 「これじゃ、授業にならない、ということが、おわかりでしょう?」話してるうちに、先生は、かなり感情的なってきて、ママに言った。ママは、(なるほど、これでは先生も、お困りだわ)と思いかけた。とたん、先生は、また一段と大きな声で、こういった。「それに……」ママはびっくりしながらも、情けない思い出先生に聞いた。「まだ、あるんでございましょうか……」先生は、すぐいった。「“まだ”というように、数えられるくらいなら、こうやって、やめていただきたい、とお願いはしません!!」それから先生は、少し息を静めて、ママの顔を見て言った。「昨日のことですが、例によって、窓のところに立っているので、またチンドン屋だと思って授業をしておりましたら、これが、また大きな声で、いきなり、「何してるの?」と、誰かに、何かを聞いているんですね。相手は、私のほうから見えませんので、誰だろう、と思っておりますと、また大きな声で、「ねえ、何をしてるの?」って。それも、今度は、通りにでなく、上のほうに向かって聞いてるんです。私も気になりまして、相手の返事が聞こえるかした、と耳を澄ましてみましたが、返事がないんです。お嬢さんは、それでも、さかんに、「ねえ、何してるの?」を続けるので、授業にもさしさわりがあるので、窓のところに行って、お嬢さんの話しかけてる相手が誰なのか、見てみようと思いました。

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