第31章

小说:窗边的小豆豆(中文版+日文版)作者:[日]黑柳彻子字数:3552更新时间 : 2017-07-30 10:15:56

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芝居だ!学芸会だ!」トモエはじまって以来のことだった。お弁当の時間に、みんなの前で、毎日だれかが、一人ずつ出て、おはなしする、というのは、ずーっと続いていたけど、お客さんも来て、講堂の、いつも校長先生が、リトミックのとき弾く、グランドピアノの乗っている小さいステージの上で、芝居をやるなんて……。とにかく、芝居というものを見たことのある子は、誰もいなかった。トットちゃんだって、バレーの「白鳥の湖」のほかは、見たこと一度だってなかった。それでも、とにかく、学年別に、出し物が検討された。そして、およそ、トモエらしくないけど、教科書に、載っていたかなんかで、トットちゃんのクラスは、「勧進帳」と、決まった。そして丸山先生が、指導してくださる事になった。弁慶は、背も高く、体も大きい税所愛子さんが、いい、という事になり、富樫は、一見まじめで、大きい声の、天寺君に決まった。そして、義経は、みんなの相談の結果、トットちゃんがやることになった。残りのみんなは、山伏の役だった?さて、稽古が始まる前、みんなは、まず、セリフというのを、おぼえなくちゃならなかった。でも、トットちゃんと、山伏は、セリフがないので、とてもよかった。なぜなら、山伏は、芝居のあいだじゅう、黙って立っていればよかったし、トットちゃんは、富樫の守っている「安宅の関」を、うまく通るために、弁慶が、主人である義経を、ぶったりして、「こんなのは、ただの山伏です」、という話だから、義経のトットちゃんは、ただ、うずくまっていれば、いいのだった。弁慶の税所さんは、大変だった。富樫と、いろいろ、やりとりがある他に、何も書いてない巻物を取り出し、富樫が、「読んでみてください」というから、「そもそも、東大寺建立のため……」とか、即興に、自分で作って、必死に読んで、敵の富樫を感動させる、という、難しいところがあるので、毎日、「そもそも……」といっていた。富樫役の天寺君だって、弁慶は、やりこめなくちゃならないセリフが、たくさんあるので、フウフウいっていた。さて、いよいよ、稽古が始まった。富樫と弁慶が、向かい合わせになり、弁慶に後ろに山伏が、並んだ。トットちゃんは、山伏の先頭にいた。ところが、トットちゃんは、話が、わかっていなかった。だから、弁慶が、義経のトットちゃんを、つきとばし、棒でぶつと、猛然と、抵抗した。税所さんの足を、けっとばしたり、引っかいたりした。だから、税所さんは泣くし、山伏は、笑った。本当なら、どんなに弁慶が義経を、ぶっても叩いても、義経が、されるままになっているので、富樫が、弁慶の心の中の、つらさを思いやって、結局、この、「安宅関」を、通してやる、という芝居だから、義経が、反抗したのじゃ、芝居にならないのだった。丸山先生は、トットちゃんに説明した。でも、トットちゃんは、絶対に、「税所さんが、ぶつんなら、私だって、ぶつ!」というので、芝居は進まなかった。何度、そこのところをやっても、トットちゃんは、うずくまりながら抵抗した。とうとう丸山先生は、トットちゃんに、いった。「悪いけど、義経の役は、泰ちゃんに、やってもらうことにしよう」トットちゃんはにとっても、それは、ありがたいことだった。だって、自分だけが、ぶたれたり、つきとばされるのは、いやだ、と思っていたから。それから、丸山先生は、いった。「そのかわり、トットちゃんは、山伏になって、ください」そこで、トットちゃんは、山伏の一番後ろに並ぶことになり、「これで、やっと、うまく、いく!」と、みんなが考えたけど、それは、みんなの間違いだった。というのは、山伏が山を登ったり降りたりするための、長い棒を、トットちゃんに渡したのが、いけなかった。トットちゃんは、立ってるだけで退屈してくると、その棒で、隣の山伏の足を、つっついたり、もう一人さきの山伏の、わきの下を、くすぐったりした。それから、また、その長い棒で、指揮者のまねをしたりしたから、まわりのみんなは、あぶなかったし、第一に、富樫と弁慶の芝居が、それで、ブチこわしになるのだった。そんなわけで、とうとう、トットちゃんは、山伏の役も、おろされてしまった。義経になった泰ちゃんは、歯を食いしばるようにして、ぶたてたり、けっとばされたりしたから、見る人は、(可哀そうに!)と思うに違いなかった。稽古は、トットちゃん抜きで、順調に進行していた。一人ぼっちになったトットちゃんは、校庭に出た。そして、はだしになり、トットちゃん風のバレーを踊り始めた。自分流に踊るのは、気持ちがよかった。トットちゃんは、白鳥になったり、風になったり、変な人になったり、木になったりした。誰もいない校庭で、いつまでも、一人で踊った。でも、心の中では、(やっぱり、義経やりたかったな)という気持ちが、少しあった。でも、いざ、やったら、やっぱり、税所さんのこと、ひっかいたり、ぶっちゃったりするに、違いなかった。こうして、あとにも先にも、トモエにとって一回だけの学芸会に、トットちゃんは残念だけど参加できなかったのだった。

    トモエの生徒は、よその家の塀や、道に、らく書きをする、ということがなかった。というのは、そういう事は、もう充分に学校の中でやっているからだった。それはどういうのかというと、音楽の時間だけど、生徒が講堂に集まると、校長先生は、みんなに、白い、はくぼくを渡した。生徒は、講堂の床の、思い思いの場所に陣取って、ねっころがったり、ちゅう腰になったり、きちんと正座したり、自由な形で、はくばくを持って、用意する。みんなの準備が揃うと、校長先生がピアノを弾く。そうすると、、みんなは、その講堂の床に、先生の弾いてる音楽のリズムを、音符にするのだった。薄茶色で、ツルツルの木の床に、はくぼくで書くのは気持ちがよかった。広い講堂に、トットちゃんのクラスの十人ぐらいが、ばらばらに散らばっているのだから、どう名に大きい音符を書いても、他の子に、ぶつかる事はなかった。音符といっても、五線を書く必要はなく、ただ、リズムを書けばいいのだった。しかも、それは校長先生とみんなで話し合って決めた、トモエ流の呼びかたの音符だった。例えば、  は、スキップ(スキップして、飛べはねるのにいいリズムだから)  は、ハタ(旗のように見えるから)  は、ハタハタ   は、ニマイバタ(二枚の旗)  は、黒\   は、白  は、白に、ほくろ(たまは、しろてん) 。マル(全音符のこと) ……と、こんな風だったから、とても音符に親しめたし、面白かったkら、この時間は、みんなの楽しみな授業だった。床に、白墨で描く、というのは、校長先生の考えだった。紙だと、どんどん、はみ出しちゃうし、黒板では、みんなが書くのに、数が足りなかった。だから、講堂の床を、大きい黒板にして、はくぼくで書けば、「体も自由に動かせるし」「どんなに早いリズムでも、どんどん書けたし」「大きい字で、かまわなかった」。何よりも、のびのびと、音楽を楽しめるのが、よかった。そして、少し時間があると、ついでに飛行機だの、お人形さんだのの絵も、描いて、かまわなかった。だから、ときどき、わざと、隣のこのところまで、つづくようにして、みんなが、つなげっこをして、講堂中が、ひとつの絵になることも、あった。音符の授業は、音楽がひつ区切りすると、校長先生が降りて来て、一人ずつのを見て廻る、というやりかただった。そして、「いいよ」とか、「ここは、ハタハタじゃなくて、スキップだったよ」とか、いってくださった。そして、みんなが、ちゃんと直すと、先生は、もう一度、弾いて、みんなも、そのリズムを正確に、たしかめて、納得するのだった。こういうとき、校長先生は、どんなに忙しくても、人任せにすることは、絶対になかった。そして、生徒たちも、小林校長先生じゃなくちゃ、絶対に、面白くなかった。ところで、この音符のあと、掃除が、かなり、大変だった。まず、黒板消しで、はくぼくを拭き、そのあとは、みんなが共同で、モップだの、お雑巾だので、すっかり、床を、きれいにするのだった。それでも、講堂中全部を拭くのは、大事だった。こんなわけで、トモエのみんなは、「らく書きゃ、いたずら書きをしたら、あとが大変!」と知っていたから、講堂の床以外では、しなかったし、第一に、一週間に、二度くらいある、この授業で、らく書きの楽しみは、もう、充分に満たされていた。トモエの生徒は、「はくぼくの感触って、とういうの」とか、「どう握って、どう動かせば、うまく書けるか」とか、「はくぼくを折らない方法」とかを、本当に、よく知っていた。

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