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というより、本当は、もともとあった曲に、先生が替え歌をつけた、というのが、正しいのだけれど。もともとの曲は、あの有名な、「船をこげよ(Row Boat)」 ロー ロー ロー ユアー ボート ジェントリー ダウン ザ ストゥリーム メリリー メリリー メリリー メリリー ライス イズ バット ア ドリームで、これに校長先生がつけた歌詞は、次のようだった。 よーく 噛めよ たべものを 噛めよ 噛めよ 噛めよ 噛めよ たべものを そして、これを歌い終わると、初めて、「いただきまーす」になるのだった。 “ロー ロー ロー ユアー ボート”のメロディーに、“よく、噛めよ”は、ぴったりとあった。だから、この学校の卒業生は、ずいぶんと大きくなるまで、このメロディーは、お弁当の前の歌う歌だ、と信じていたくらいだった。校長先生は、自分の歯が抜けていたので、この歌を作ったのかもしれないけど、本当は、「よく噛めよ」というより、お食事は、時間をかけて、楽しく、いろんなお話しをしながら、ゆっくり食べるものだ、と、いつも生徒に話していたから、そのことを忘れないように、この歌を作ったのかもしれなかった。さて、みんなは、大きな声で、この歌を歌うと、「いただきまーす」といって、「海のものと山のもの」に、とりかかった。トットちゃんも、もちろん、同じようにした。 講堂は一瞬だけ、静かになった。
散歩 お弁当の後、みんなと校庭で走り回ったトットちゃんが、電車の教室に戻ると、女の先生が、「皆さん、今日は、とてもよく勉強したから、午後は、何をしたい?」と聞いた。トットちゃんが、(えーと、私のしたいこと、って言えば……)なんて考えるより前に、みんなが口々に「散歩!」といった。すると先生は、 「じゃ、行きましょう」といって立ち上がり、みんなも、電車のドアを開けて、靴を履いて、飛び出した。トットちゃんは、パパと犬のロッキーと、散歩に行ったことはあるけど、学校で、散歩に行く、って知らなかったから、ビックリした。でも、散歩は大好きだから、トットちゃんも、急いで靴を履いた。あとで分かったことだけど、先生が朝の一時間目に、その日、一日やる時間割の問題を黒板に書いて、みんなが、頑張って、午前中に、全部やっちゃうと、午後は、たいがい散歩になるのだった。これは一年生でも、六年生でも同じだった。学校の門を出ると、女の先生を、真ん中にして、九人の一年生は、小さい川に沿って歩き出した。川の両側には、ついこの間まで満開だった、桜の大きい木が、ずーっと並んでいた。そして、見渡す限り、菜の花畑だった。今では、川も埋め立てられ、団地やお店でギュウヅメの自由の丘も、この頃は、ほとんどが畑だった。「お散歩は、九品仏よ」と、兎の絵のジャンパー?スカートの、女の子がいった。この子は、“サッコちゃん”という名前だった。それからサッコちゃんは、「九品仏の池のそばで、この前、蛇を見たわよ」とか、「九品仏のお寺の古い井戸の中に、流れ星が落ちてるんだって」とか教えてくれた。みんなは、勝手に、おしゃべりしながら歩いていく。空は青く、蝶々が、いっぱい、あっちにも、こっちにも、ヒラヒラしていた。十分くらい歩いたところで、女の先生は、足を止めた。そして、黄色い菜の花を指して、「これは、菜の花ね。どうして、お花が咲くか、分かる?」といった。そして、それから、メシベとオシベの話しをした。生徒は、みんな道にしゃがんで、菜の花を観察した。先生は、蝶々も、花を咲かせるお手伝いをしている、といった。本当に、蝶々は、お手伝いをしているらしく、忙しそうだった。それから、また先生は歩き出したから、みんなも、観察はおしまいにして、立ち上がった。誰かが、「オシベと、アカンベは違うよね」とか、いった。トットちゃんは、(違うんじゃないかなあー!)と思ったけど、よく、わかんなかった。でも、オシベとメシベが大切、ってことは、みんなと同じように、よく分かった。そして、また十分くらい歩くと、見たいもののほうに、キャアキャアいって走っていった。サッコちゃんが、「流れ星の井戸を見に行かない?」といったので、もちろん、トットちゃんは、「うん」といって、サッコちゃんの後について走った。井戸っていっても、石みたいので出来ていて、二人の胸のところくらいまであり、木のふたがしてあった、二人でふたを取って、下をのぞくと中は真っ暗で、よく見ると、コンクリートの固まりか、石の固まりみたいのが入っているだけで、トットちゃんが想像してたみたいな、キラキラ光る星は、どこにも見えなかった。長いこと、頭を井戸の中に突っ込んでいたトットちゃんは、頭を上げると、サッコちゃんに聞いた。「お星さま、見た?」サッコちゃんは、頭を振ると「一度も、ないの」といった。トットちゃんは、どうして光らないか、お考えた。そして、いった。「お星さま、今、寝てるんじゃないの?」サッコちゃんは、大きい目を、もっと大きくしていった。「お星さまって、寝るの?」トットちゃんは、あまり確信が無かったから、早口でいった。「お星さまは、昼間、寝てて、夜、起きて、光るんじゃないか、って思うんだ」それから、みんなで、仁王さまのお腹を見て笑ったり、薄暗いお堂の中の仏さまを、(少し、こわい)と思いながらも、のぞいたり、天狗さまの大きな足跡の残ってる石に、自分の足を乗せて比べてみたり、池の周りを回って、ボートに乗っている人に、「こんちは」といったり、お墓の周りの、黒いツルツルの、あぶら石を借りて、石蹴りをしたり、もう満足するぐらい、遊んだ。特に、初めてのトットちゃんは、もう興奮して、次から次と、何かを発見しては、叫び声を上げた。春の日差しが、少し傾いた。先生は、「帰りましょう」といって、また、みんな、菜の花と桜の木の間も道を、並んで、学校に向かった。子供たちにとって、自由で、お遊びの時間と見える、この「散歩」が、実は、貴重は、理科か、歴史か、生物の勉強になっているのだ、ということを、子供たちは気がついていなかった。トットちゃんは、もう、すっかり、みんなと友達になっていて、前から、ずーっと一緒にいるような気になっていた。だから、帰り道に「明日も、散歩にしよう!」と、みんなに大きい声で言った。みんなは、とびはねながら、いった。「そうしよう」蝶々は、まだまだ忙しそうで、鳥の声が、近くや遠くに聞こえていた。トットちゃんの胸は、なんか、うれしいもので、いっぱいだった。
校歌 トットちゃんには、本当に、新しい驚きで、いっぱいの、トモエ学園での毎日が過ぎていった。相変わらず、学校に早く行きたくて、朝が待ちきれなかった。そして、帰ってくると、犬のロッキーと、ママとパパに、「今日、学校で、どんなことをして、どのくらい面白かった」とか、「もう、びっくりしちゃった」とか、しまいには、ママが、「話は、ちょっとお休みして、おやつにしたら?」というまで、話をやめなかった。そして、これは、どんなにトットちゃんが、学校に馴れてもやっぱり、毎日ように、話すことは、山のように、あったのだった。(でも、こんなに話すことがたくさんあるってことは、有難いこと)と、ママは、心から、嬉しく思っていた。ある日、トットちゃんは、学校に行く電車の中で、突然、「あれ?オモエに校歌って、あったかな?」と考えた。そう思ったら、もう、早く学校に着きたくなって、まだ、あと二つも駅があるのに、ドアのところに立って、自由が丘に電車が着いたら、すぐ出られるように、ヨーイ?ドンの格好で待った。ひとつ前の駅で、ドアが開いたとき、乗り込もうとした、おばさんは、女の子が、ドアのところで、ヨーイ?ドンの形になってるので、降りるのか、と思ったら、そのままの形で動かないので、「どうなっちゃってるのかね」といいながら、乗り込んできた。こんな具合だったから、駅に着いたときの、トットちゃんの早く降りたことといったら、なかった。若い男の車掌さんが、しゃれたポーズで、まだ、完全に止まっていない電車から、プラットホームに片足をつけて、おりながら、「自由が丘!お降りの方は……」といったとき、もう、トットちゃんの姿は、改札口から、見えなくなっていた。学校に着いて、電車の教室に入ると、トットちゃんは、先に来ていた、山内泰二君に、すぐ聞いた。「ねえ、タイちゃん。この学校って、校歌ある?」物理の好きなタイちゃんは、とても、考えそうな声で答えた。「ないんじゃないかな?
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