第17章

小说:窗边的小豆豆(中文版+日文版)作者:[日]黑柳彻子字数:3507更新时间 : 2017-07-30 10:15:55

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時々、通りかかる、誰か知らないおばさんに、「あの……」と小さい声でいうんだけど、みんな遊んでるのかと思って、ニコニコして行ってしまうのだった。夕方、薄暗くなったごろ、探しに来たママは、びっくりした。砂の山からトットちゃんが、顔を出していたのだから。ママは棒を探して来て、それの片方をトットちゃんに渡すと、引っ張って、山から出してくれた。手で引っ張ったら、ママの足もネチャネチャの中に入ってしまうからだった。ほとんど、全身、ねずみ色の壁みたい担ってるとっとちゃんに、ママは言った。「この前もいったけど、何か面白いもの見つけたとき、すぐ、とび込んじゃダメなの。よく、そばに行って、調べてからにしてちょうだい!」この前というのは、学校の昼休みのことだったけど、トットちゃんが講堂の裏の細い道を、ぶらぶら歩いていると、道の真ん中に、新聞紙が置いてあった。(面白そう!)そう思ったトットちゃんは、「わーい!」というといつものように、少し後ろにさがって、ポン。。。と飛び上がって、はずみをつけ、新聞紙の、真ん中めがけて全速力で、駈けて飛び乗った。ところが、それは、この前、お財布を落とした、あのトイレの汲み取り口で、小使いのおじさんが、仕事の途中に出かけるかなにかで、におうといけないので、コンクリートのふたを取った、その上に、新聞紙を載せて置いてあったのだった。だから、トットちゃんは、そのまま、「ドボン!」と、トイレの中に落ちたのだった。そのあと、いろいろ大変だったけど、とにかく、運良く、トットちゃんは、きれいな子に戻った。その時のことを、ママは言ったのだった。「もう、とびこまない」トットちゃんは、壁みたいに静かにいった。ママは安心した。ところが、そのあとの、トットちゃんのいったことを聞いて、(やっぱり安心するのは早かった)と、ママは思った。なぜなら、トットちゃんが、そのあとで、こういったからだった。「新聞紙と、砂の山には、もう飛び込まない」 ……つまり、ほかのものなら、また、とび込むに違いないことは、ママに、はっきりと、したのだった。そろそろ、日の暮れるのが、早くなってきていた。

    ふだんでも、みんなが楽しみにしてる、トモエのお弁当の時間に、最近になって、面白いことが、また増えた。トモエのお弁当の時間は、今までは、校長先生が、全校生徒五十人の「海のもの」と「山のもの」の、おかずの点検があって、その海か山か、どっちかが、足りないとわかった子に、校長先生の奥さんが、両手に一つずつ持って歩いてる海と山の、お鍋から、おかずが配られて、それから、「よーく 噛めよ たべもの……を、みんなで歌って、「いただきまーす」になったのだけど、今度から、この「いただきまーす」のあとに、「誰かさんの、“おはなし”」というのが入ることになったのだ。この間、校長先生が、「みんな、もっと話しが上手になったほうが、いいな。どうだい、今度から、お弁当の時、みんなが食べてる間、毎日、違う誰かさんが、一人、みんなの輪の真ん中に入って、お話する、ってのは?」といった。子供達は、(自分で話すのは上手じゃないけど、聞くのは面白いな)とか、(わあー、みんなにお話してあげるのなんか、スッゴク好き)とか、いろんな風に考えた。トットちゃんは、(どんな話をすればいいか、まだわかんないけど、やってみる!)と思った。こんなわけで、ほとんどが校長先生の考えに賛成だったので、次の日から、この「おはなし」が始まったのだった。校長先生は、自分の外国生活の経験から、普通、日本では、「ご飯の時は、黙って食べなさい」と、家で言われている子供達に、「食事というのは、できるだけ楽しく。だから、急いで食べないで、時間をかけて、お弁当の時間には、いろんな話をしながら食べていい」といつもいっていた。そして、もうひとつ、(これから子供は、人の前に出て、自分の考えを、はっきりと自由に、恥ずかしがらずに表現できるようになることが、絶対に必要だ)と考えていたから、そろそろ始めてみよう、と決めたのだった。だから、校長先生は、みんなが、「賛成!」といったとき、こういった。トットちゃんは一生懸命に聞いた。「いいかい。上手にお話しようとか、そんな風に思わなくていいんだよ。そして話も、自分のしたいこと、なんでもいいからね。とにかく、やってみようじゃないか?」なんとなく順番も決まった。お話をする番になった人だけは、「よーく 噛めよ……を歌ったら、一人だけ、急いで食べていいことも決まった。ところが、三人ぐらいとかの、小さいグループの中で、休み時間に話すのと違って、全校生徒、五十人の真ん中で、話す、というのは、勇気もいるし、難しいことだった。初めの頃は、照れちゃって、ただ「イヒイヒイヒイヒ」笑ってばかりの子や、必死になって考えてきたのに、出たとたんに忘れちゃって、話しの題名らしい、「蛙の横っちょ飛び」というのだけを何回も、くり返した挙句、結局、「雨が降ると……、おしまい」といって、お辞儀をして席に帰る子もいた。トットちゃんは、まだ番が来なかったけど、来たら、やっぱり、自分の一番好きな、「お姫さまと王子さま」の話しよう、と決めていた。でも、トットちゃんの「お姫さまと王子さま」の話は有名で、いつもお休みの時間にしてあげると、みんなが、「もう飽きたよ」というぐらいだったけど、やっぱり、それにしよう、と思っていた。こうやって、毎日、変わりばんこに前に出て話す習慣が少しずつついて来た、ある日、絶対に順番が来ても、「しない」と言い張る子がいた。それは、「話は、何にも無い!」という男の子だった。トットちゃんは、(話なんか無い)という子がいたことに、とても、びっくりした。ところが、その子は、無い!のだった。校長先生は、その子の空になったお弁当箱の、のった机の前にいくと、いった。「君は話が、ないのかあ……」「なんにも無い!」その子は、いった。決して、ひねくれたり、抵抗してるんじゃなくて、本当に無いようだった。校長先生は、「ハ、ハ、ハ、ハ」と歯の抜けているのを気にしないで笑って、それからいった。「じゃ、作ろうじゃないか!」「作るの?」その子は、びっくりしたようにいった。それから校長先生は、その子は、みんなの座ってるりんの真ん中に立たすと、自分は、その子の席に座った。そして、いった。「君が、今朝、起きてから、学校に来るまでのことを、思い出してごらん!最初に、何をした?」その男の子は、頭の毛をボリボリ掻きながら、まず、「えーと」といった。そしたら校長先生が言った。「ほら、君は、「えーと」っていったよ。話すこと、あったじゃないか。「えーと」の次は、どうした?」すると、その子は、また頭をボリボリ掻きながら、「えーと、朝起きた」といった。トットちゃんやみんなは、少し、おかしくなったけど、注目していた。それから、その子は、「そいでさあ!」といって、また、頭をボリボリやった。先生は、じーっと、その子の様子を、ニコニコした顔で、手を机の上に組んでみていたけど、そのとき、いった。「いいんだよ、それで。君が朝起きた、ってことが、これで、みんなにわかったんだから。面白いことや、笑わせること話したから偉いって言うことじゃないんだ。「話が無い!」っていった君が、話を見つけたことが、大切なんだよ」するとその子は、すごく大きな声で、こういった。「それからさあ!」みんなは、一斉に身を乗り出した。その子は、大きく息を吸うと、いった。\ 「それからさあ!、お母さんがさあー、歯を磨きなさい、っていったから、みがいた」校長先生は拍手した。みんなも、した。すると、その子は、前よりも、もっと大きい声で、いった。「それからさあ!」みんなは拍手をやめ、もっと耳を済ませて、ますます身をのり出した。その子は、得意そうな顔になって、いった。「それからさあー、学校に来た!」身をのり出した上級生の中には、少しつんのめったのか、お弁当箱に、頭をぶつける子もいた。でも、みんなは、とてもいれしくなった。(あの子に、話しがあった!)先生は大きく拍手をした。トットちゃん達も、うんとした。真ん中に立ってる「それからさあー」の子も、一緒になって、拍手をした。講堂は、拍手だらけになった。この拍手のことを、この子は、おそらく大人になっても、忘れないに違いなかった。

    今日は、トットちゃんに大事件が起こった。それは、学校から帰って来て、晩御飯までの間、ちょっと遊んでるときのことだった。

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