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どの子もリュックサックをふくらませて、校長先生の言うことも待っていた。生徒たちの、後ろには、有名な滝の、豊かな水が、力強く、そして美しいリズムを作っていた。先生は言った。「いい会。何人でグループを作って、まず、先生たちが持ってきたレンガを使って、カマドを作ろう。それから、手分けして、河でお米を洗って、火にかけたら、あとは豚汁だ。さあ、始めようか!」生徒たちは、ジャンケンとか、いろんな方法で、グループに分かれた。全校生徒で五十人たらずなのだから、六つくらいのグループが、すぐ出来た。穴を掘って、レンガを、かこいのように積む。その上に鉄の細いさんのようなものを乗せて、おなべと飯盒を載せる台を作る。誰かさん達は、その間に、林の中で、たくさん、落ちている薪を拾って来る。それから、河にお米をとぎに行く子。いろんな役目を自分たちで作って分担した。トットちゃんは、自分で推薦して、お野菜を切る、「豚汁のかかり」になった。もう一人、トットちゃんより二年上の男の子も野菜を切る役目だったけど。この子がやると、すごく大きいのや小さいのや、目茶苦茶な形になった。でも、その男の子は、鼻の頭に汗をいっぱいかいて、格闘していた。トットちゃんは、みんなの持ってきた、おなすや、じゃがいも、お葱、ごぼうなどを、ママがするように、上手に、食べやすい大きさに切った。それから思いついて、キューリとおなすを薄く切って、お塩でもんで、ご丁寧に、お漬物まで作った。そして、時々、格闘してる上級生に、「こうやれば?」なんて教えたりもした。だから、なんとなく、もう、お母さんに、なったような気さえした。みんなは、トットちゃんの、お漬物に感心した。トットちゃんは、両手を腰にあてて、謙遜した風にいった。「ちょっと、やってみただけよ」豚汁の味付けは、みんなの意見で決めることのした。どのグループからも、「キャア!」とか、「わあーい」とか「いやだあー」とか、笑う声がしていた。林の中の、いろんな鳥たちも、一緒に大騒ぎをしているように、さえずっていた。そのうちに、どの、おなべからも、いいにおいがしてきた。これまで、ほとんどの子は、自分の家で、おなべをじーっと見つめたり、火加減を自分でするって言うことはなく、たいがい、テーブルに出されたものを食べるのに馴れていた。だから、こんな風に自分たちで作る、ということの楽しさと、当時に、大変さと、それから食べ物が出来るまでの、さまざまな、ものの変化などを知ったのは、大発見だった。いよいよ、どのカマドも完成した。校長先生は、草の上に、丸くなって座るように、場所を作ろう、といった。おなべや、飯盒が、それぞれのグループの前に運ばれた。でも、トットちゃんのグループは、トットちゃんが絶対にしようと決めていた、あの動作……おなべのふたを取って、「あちちちち……」をするまで、出来上がりを運ぶのを待たなければならなかった。そして、トットちゃんが、少し、わざとらしく、\ 「あちちちち……」といって、両手の指を両耳たぶにつけて、それから、「いいわよ」といったので、なんだかわからないけど、運んだのだった。この耳たぶの動作を、誰も「ステキ」とは言ってくれなかったけど、トットちゃんは、もう満足していた。みんなは、自分の前のお茶碗と、おわんの中の湯気の立っているものを、見つめた。お腹も空いていたし、第一に、自分たちで作ったお料理なんだから。よーく 噛めよ たべものを……の歌に続いて、「いただきまーす」といったあと、林の中は、急に静かになった。滝の音だけになった。
校長先生は、トットちゃんを見かけると、いつも、いった。「君は、本当は、いい子なんだよ!」そのたびにトットちゃんは、ニッコリして、とびはねながら答えた。「そうです、私は、いい子です!」そして、自分でもいい子だと思っていた。確かにトットちゃんは、いいこのところもたくさんあった。みんなに親切だったし、特に肉体的なハンディキャップがあるために、よその学校の子にいじめられたりする友達のためには、ほかの学校の生徒に、むしゃぶりついていって、自分が泣かされても、そういうこの力のなろうとしたし、加賀をした動物を見つけると、必死で看病もした。でも当時に、珍しいのや、興味のあることを見つけたときには、その自分の好奇心を満たすために、先生たちが、びっくりするような事件を、いくつも起こしていた。たとえば、朝礼で進行をするときに、頭の毛を二本のおさげにして、それぞれの尻尾を、後ろから、両方の、わきの下から出し、腕で、はさんで、見せびらかして歩いてみたり。お掃除の当番のとき、電車の教室の床のふたを上げて……、ごみを捨てて、いざ閉めようとしたら、もうしまらないので、大騒ぎになったり。また、ある日は、誰かから、牛肉は大きな肉の固まりが、鉤からぶら下がってると聞くと、朝から一番高い鉄棒に片手だけで、ぶら下がって、いつまでも、そのままでいる。女の先生が、「どうしたの?」と聞くと、「私は今日、牛肉!」と叫び、とたんに落ちて、「ウッ!」といったまま、一日中、声が出なくなったり。お昼休み、学校の裏をブラブラ歩いていて、道に新聞紙がひろげて置いてあるので、とてもうれしくなって、遠くから、はずみをつけて、凄い、勢いで走って来て、その新聞紙に、飛び乗ったら、それは掃除の人が、トイレの汲み取り口をどかして、におうといけないので、乗せてあっただけだから、そのまま、汲み取り口に、ズボ!っと、胸まで、つかってしまったり……。そんな風に、自分自身が、痛い目にあう事も、しょっちゅうだった。でも校長先生は、そういうことがおきたときに、絶対に、パパやママを呼び出すことはなかった。ほかの生徒でもおなじ事だった。いつも、それは、校長先生と、生徒との間で解決した。初めて学校に来た日に、トットちゃんの話を、四時間も聞いてくれたように、校長先生は、事件を起こした、どの生徒の話も、聞いてくれた。その上、いいわけだって、聞いてくれた。そして、本当に、「その子のした事が悪い」とき、そして、「その子が自分で悪い」と納得したとき、「あやまりなさい」といった。でも、おそらく、トットちゃんに関しては、苦情や心配の声が、生徒の父兄や、ほかの先生たちから、校長先生の耳に届いているに違いなかった。だから校長先生は、トットちゃんに、機会あるごとに、「君は、本当に、いい子なんだよ」といった。その言葉を、もし、よく気をつけて大人が聞けば、この「本当」に、とても大きな意味があるのに、気がついたはずだった。「いい子じゃないと、君は、人に思われているところが、いろいろあるけど、君の本当の性格は悪くなくて、いいところがあって、校長先生には、それが、よくわかっているんだよ」校長の小林先生は、こう、トットちゃんに伝えたかったに違いなかった。残念だけど、トットちゃんが、この本当の意味がわかったのは、何十年も、経ってからのことだった。でも、本当の意味は、わからなくても、トットちゃんの心の中に、「私は、いい子なんだ」という自信をつけてくれたんは、事実だった。だって、いつも、何かをやるとき、この先生の言葉を思い出していたんだから。ただ、やったあとで、「あれ?」と思うことは、ときどき、あったんだけど。そして、トットちゃんの一生を決定したのかも知れないくらい、大切な、この言葉を、トットちゃんが、トモエにいる間じゅう、小林先生は、言い続けてくれたのだった。「トットちゃんは、君は、本当は、いい子なんだよ」って。
今日、トットちゃんは、悲しかった。もう、トットちゃんは、三年生になっていて、同級生の泰ちゃんを、とても好きだと思っていた。頭がよくて、物理が出来た。英語を勉強していて、最初に「キツネ」という英語を教えてくれたのも、泰ちゃんだった。「トットちゃん、キツネは、フォックスだよ」(フォックスかあ……)その日、トットちゃんは、一日“フォックス”という響きに、ひたったくらいだった。だから、毎朝、電車の教室に行くと、最初にする事は、泰ちゃんの筆箱の中の鉛筆を、全部ナイフで、きれいに、けずってあげる事だった。自分の鉛筆ときたら、歯でむしりとって、使っているというのに。ところが、今日、その泰ちゃんが、トットちゃんを呼び止めた。そのとき、トットちゃんは、昼休みなので、プラプラと講堂の裏の、れのトイレの汲み取り口のあたりを散歩してたんだけど、「トットちゃん!」という泰ちゃんの声が、怒ってるみたいなので、びっくりして立ち止った。
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